特定都区市内制度の解説と活用法

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JRの乗車券には「特定都区市内制度」(特定の都区市内駅を発着する場合の特例)という運賃計算の特例があります。乗車券上には実際に乗車・降車する駅名ではなく「東京都区内」や「大阪市内」と書かれているものです。このページではこの「特定都区市内制度」についての説明や活用方法を紹介します。

特定都区市内とは

制度の内容

この制度は東京や大阪など全国の11都市と片道200キロを超える乗車券を購入する場合、都市内のどの駅からであってもその都市の中心駅からの営業キロ・運賃計算キロを用いるという特例です。

つまり、東京都内であれば渋谷駅や池袋駅などのメジャーな駅であっても、小岩駅、蒲田駅などの少々マイナーな駅あっても、200キロを超える場合は東京駅として扱おうという制度です。(山手線については更に特定がありますので後述します。)

具体的に新潟駅から新宿駅までを例にして説明します。

ここでは新宿駅から東京駅まで中央線で移動し、東京駅から新潟駅までは上越新幹線を用いることにしました。実際の営業キロは344.2キロとなり、運賃は6,050円となりますが、新宿駅は東京都区内ですので、中心駅である東京駅から新潟駅までの営業キロ333.9キロが適用され運賃は5,720円となります。

なお、特定都区市内で途中下車をすることはできません。上記の場合は途中の御茶ノ水や四谷で下車することはできませんので注意しましょう。

JR各社のページは下記のとおりです。

東京山の手線内を発着する場合の特例

特定都区市内は200キロを超える場合に適用されますが、山の手線内の場合は同様の特例が101キロ以上200キロ以下の場合でも適用され、同様に東京駅からの運賃となります。

駅名標での表示

特定都区市内にある駅は駅名標に表示があります。下記は東京駅ですが、右上に「山」と「区」というサインがあり、それぞれ「東京山手線内」と「東京都区内」を指しています。

適用される11都市

適用される11都市については以下のとおりです。

札幌市内

中心駅: 札幌駅

Sapporo-shinai

仙台市内

中心駅: 仙台駅

Sendai-shinai

東京都区内・東京山手線内

中心駅: 東京駅

Tokyo-tokunai

横浜市内

中心駅: 横浜駅

横浜市外である川崎・尻手・八丁畷・川崎新町・小田栄・鶴見線内の全駅を含む。
羽沢横浜国大駅のために市外乗車(鶴見 – 新川崎 – 武蔵小杉)の特例が存在する。

Yokohama-shinai

名古屋市内

中心駅: 名古屋駅

Nagoya-shinai

京都市内

中心駅: 京都駅

所在地表記が京都市外となっている保津峡を含む。

Kyoto-shinai

大阪市内

中心駅: 大阪駅

大阪市外である南吹田・高井田中央・JR河内永和・JR俊徳道・JR長瀬及び衣摺加美北を含む。
市外乗車(塚本 – 尼崎 – 加島間、加美 – 久宝寺 – 新加美間)及び大阪駅と北新地駅との乗り継ぎの特例が存在する。

Osaka-shinai

神戸市内

中心駅: 神戸駅

神戸市北区にある道場(福知山線)を除く。
新神戸駅の新幹線と在来線を乗り継ぐために「特別下車」が可能。

Kobe-shinai

広島市内

中心駅: 広島駅

広島市外である海田市・向洋(安芸郡海田町及び府中町・山陽本線)を含む。

Hiroshima-shinai

北九州市内

中心駅: 小倉駅

Kitakyushu-shinai

福岡市内

中心駅: 博多駅

福岡市西区にある筑肥線「姪浜 – 周船寺」間の各駅を除く。

Fukuoka-shinai

特定都区市内制度の活用術

それでは、この特定都区市内制度を活用する方法を考えましょう。

定期や他の切符との併用

1つ目は定期や私鉄・地下鉄等を含めた他の切符との併用です。発着駅が東京周辺で特定都区市内ではない場合、特定都区市内の最初の駅まで移動する切符を購入することで、特定都区市内の最初の駅から中央駅までの運賃はかからないこととになります。

例えば千葉から名古屋市内までを千葉駅から東京駅までを総武快速線で移動し、東京駅から名古屋駅までを東海道新幹線で移動するケースを見てみましょう。

片道乗車券は千葉駅から名古屋市内までの通しの場合、405.2キロ6,930円となります。一方、下のように千葉駅~小岩駅26.4キロ480円(IC運賃473円)と東京駅(東京都区内中心駅)~名古屋市内366キロ6,380円を分けて購入すると、合計6,860円となり70円安くなります。

微々たる額ですが、特定都区市内まで通勤や通学のために定期を持っている方もいらっしゃると思います。この場合は特定都区市内の駅までの乗車券を購入する必要はなく、特定都区市内からの乗車券のみ購入すれば問題ないため、550円分が安くなります。

例えば千葉駅~新宿駅の定期を所持していた場合、定期券では東京駅まで行くことはできませんが、先程の例と同様に出発は秋葉原駅など東京都区内の駅であるため、東京駅まで行くことが可能です。

特定都区市内の駅を避けて購入する

このように特定都区市内を活用すると運賃が安くなるケースも存在する一方で、運賃が高くなってしまう例も存在します。このような場合は特定都区市内の直前で購入することで運賃の上昇を抑えることが可能です。

具体例として荻窪駅から松本駅までのケースを見てみましょう。

荻窪駅~松本駅の実際の営業キロは216.7キロであり、運賃は3,740円が適用になるはずなのですが、荻窪駅は東京都区内に含まれているため、運賃上は東京都区市内の中心駅である東京駅~松本駅として計算されるため235.4キロ4,070円が適用されてしまいます。つまり、実際には乗車しない荻窪駅~東京駅間の18.7キロが加算されてしまっていることになります。

そのため東京都区内より外側の吉祥寺駅まで別に乗車券を購入することで、特定都区市内制度の適用を逃れるようにします。

荻窪駅~吉祥寺駅間は3.8キロ160円(IC運賃157円)、吉祥寺駅~松本駅間は212.9キロ3,740円であり合計3,900円になります。170円ですが安く乗車することが可能です。

分割購入を用いることで更に安く購入することもできるかもしれません。詳しくは下記リンクをご覧ください。

注意点

特定都区市内制度を利用するにあたっての注意点については下記のとおりです。

途中下車ができない

特定都区市内では途中下車をすることができません。特定都区市内でルート上に用がある場合は別に乗車券を買い求める必要があります。

適用されない乗車券がある

「ぷらっとこだま」や「えきねっとトクだ値」などJR各社が販売している乗車券でも特別企画乗車券のものは基本的には適用されず、200キロを超えている乗車券であっても、乗車駅や降車駅が限定されてしまうものがほとんどです。残念なことにならないように購入前に注意してください。

例えば東京駅~大阪駅間を移動する場合、通常の特定都区市内が適用される切符であれば新大阪駅~大阪駅は料金に含まれていますが、「ぷらっとこだま」の場合はで利用した場合、新大阪駅までであるため、新大阪駅~大阪駅の乗車券を個別に購入する必要があります。

まとめ

特定都区市内制度について解説を行いました。複雑な内容ですが、かつてコンピューターが普及していなかったころに駅の業務を簡略化するために取り入れられた制度のようなので、今となっては複雑な制度となってしまっていますが、知っておくとより良い制度でもあります。

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