JRの運賃は距離があればあるほど安くなるように作られています。これを遠距離逓減制といいます。このページではきっぷを一筆書きをすることで、往復運賃割引より安い運賃で移動する方法を考えます。
一筆書き乗車券のしくみ
一筆書き乗車を成立させるには、遠距離逓減制と有効期限の2つが大きな要素となっています。それぞレ見てきましょう。
遠距離逓減制
まず、JRの乗車券は遠距離逓減制という、距離が長ければ長いほど1キロ当たりの運賃が低くなるようになっています。
下記は運賃算出のベースとなるJR本州3社の10キロまでの運賃を除いた営業キロあたりの賃率です。運賃はこの賃率をもとに端数処理や消費税を考慮して算出されています。
営業キロ | ~300キロ (第1地帯) | 301キロ~600キロ (第2地帯) | 601キロ~ (第3地帯) |
対キロ賃率 | 16.20円 | 12.85円 | 7.05円 |
この表の通り、601キロ以上の1キロあたりの賃率が300キロまでの半額以下というのは、往復割引が「ゆき」・「かえり」それぞれ1割引であることを考えると、大きな割引であることがわかると思います。
ただし、この遠距離逓減制を利用するためには、同じ駅や同じ区間を2度通ってはいけません。乗り換え案内のサイトでも出発駅と到着駅を1駅ずらし、経由地を増やすことで確認できます。ただあまりに長距離でルートがたくさんある場合はどうしても経由地の候補が多くなってしまうので、ルート検討する際は地図や時刻表を見ながらでないと難しいかと思います。
また、大都市近郊区間のみの乗車券は乗車する経路に関係なく最短経路で計算した運賃となってしまうため、このような一筆書きの経路で乗車券を購入し、途中下車ということはできません。東京近郊区間はとても広いため注意が必要です。
有効期限が長い・途中下車できる
遠距離逓減制で長く乗車すれば運賃が安くなりますが、出張や観光などのためには鉄道を降りて宿泊できなければならないでしょう。
JRの乗車券は101キロ以上の長距離になると数日に渡って使用でき、途中下車することも可能になります。有効期限と営業キロは下記のとおりです。
営業キロ | 有効期限 |
200キロまで | 2日 |
400キロまで | 3日 |
600キロまで | 4日 |
800キロまで | 5日 |
1,000キロまで | 6日 |
1,200キロまで | 7日 |
1,400キロまで | 8日 |
1,600キロまで | 9日 |
1,800キロまで | 10日 |
途中下車の際は有人改札を通りましょう。自動改札の場合、吸い込まれてしまう場合があります。
また「東京都区内」「名古屋市内」と書かれる特定都区市内や東京山手線内などの場合、出発駅や到着駅のゾーン内で途中下車することができません。例えば「東京都区内」に所属する東京駅から出発した場合、同じ「東京都区内」にある品川駅では途中下車をすることができません。
特定都区市内については以下の記事を参考にしてください。
一筆書き乗車券の活用例
東京~金沢
まず、きれいに一筆書きとなる東京ー金沢間を例に上げましょう。
一筆書きのルートは下記のとおりとなります。
東京~金沢間は往復割引の適用下限である601キロに満たないため、単純に片道料金のを二倍にしたものを往復料金として、一筆書きの運賃と比較しました。
乗車券 | |
一筆書き | 13,200円 |
往復料金 (片道料金) | 14,960円 (7,480円) |
特急しらさぎは名古屋駅始発の列車もあるので、名古屋に途中下車で立ち寄って金沢に行くことも可能です。こういった事ができるのも一筆書き乗車券の良いところですね。
なお、同様の方法で福井へ行くことも可能です。
東京~名古屋
次に東京~名古屋間をみてみましょう。
東京~名古屋間も往復割引は適用されませんので往復料金は片道料金の二倍となります。
一筆書きの経路は行きは東海道新幹線で名古屋まで行き、帰りは塩尻まで特急「しなの」、塩尻からは特急「あずさ」を利用することになります。
乗車券 | |
一筆書き | 10,670円 |
往復料金 (片道料金) | 12,760円 (6,380円) |
この場合、名古屋側の東海道本線と中央本線の分岐駅が名古屋の一駅前の金山駅になるため、名古屋で途中下車をする場合、名古屋ー金山の往復運賃を支払う必要があります。(途中下車しない場合は支払う必要はありません。(分岐駅を通過する列車に乗車する場合の特例に該当)
新幹線と在来線の乗継割引
名古屋駅で新幹線と在来線特急を乗り継ぐ場合、在来線特急の特急・急行料金・指定席料金が半額になる新幹線乗り継ぎ割引を活用することが可能です。(新幹線特急券と在来線特急券を同時に買う必要があります。)
新幹線→在来線特急の場合、当日中の乗り継ぎが必要ですが、在来線→新幹線の場合は翌日でも大丈夫です。
買い方
一筆書きのきっぷはみどりの窓口の他、指定席券売機やえきねっとなどでも購入することができます。ただし、出発駅と到着駅が同一の設定ができないケースもあるため、そういった場合はどちらかを一駅違う駅にするなどの工夫で購入することが可能です。
デメリット・注意点
デメリットとしては、やはり普通に往復するよりどうしても時間がかかることが挙げられます。上記のように、どうしても新幹線と特急の組み合わせになってしまうため、新幹線往復よりも時間がかかります。
名古屋のケースのように新幹線を利用すると、在来線の乗り換え駅を通り越してしまうケースが多々あり、このあたりの乗車券の考え方がかなり複雑なため、注意して購入するようにしてください。
おわりに
今回は一筆書きの乗車券により、節約する方法を見てきました。2拠点間の移動を節約する面ももちろんありますが、醍醐味は途中下車を組み合わせて様々な場所に行くことができるのも大きなメリットではないでしょうか。ぜひ活用してみてください。